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実験的にあれこれ


by para_noid
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数値海岸の先に

先日、御紹介させて頂いた「飛 浩隆」さんの「象られた力」がかなり面白かったので、同じく早川書房より出ている「グラン・ヴァカンスー廃園の天使」を購入。コレがもう、読み始めたら止まらない面白さで、一気に読み上げる。

ある程度の長編になると、物語の終わり間際に「急ぎ過ぎた風情」を感じたり、その終わり方に不満を感じることも多いのだが……物語の続きを大いに期待させ、真実を知った上で最初から読み直したいと思わせる美しい終焉に感動させられた。三部予定の第一部とのことで、今後が非常に楽しみ。早く読みたいが、続きが観られるのは当分先なのだろうな。



ネットワークの何処かに存在する、仮想リゾート「数値海岸」の一区画「夏の区界」。人の訪れが絶えて久しいこの区界で、千年もの間、同じ夏の一日を繰り替えし続けるAI達。AIであるが故に抱える、設定された苦悩。越えられない壁と、千年の間に歪さを増す関係……どれをとっても美しく、残酷で面白い。「蜘蛛」の襲来で静寂はうち破られたが、はたして蜘蛛が来なかったとして……。

内容に加虐的な部分も多く、誰にでも薦められるというものでも無いのですが、興味があったら是非お手に取って頂きたい一作。

こんなに読後にビリビリきた本も久しぶり。伏線が解消された瞬間の、歯車の合った快感はかなり大きい印象。AIとしての機能と、仮想世界での人間的相互関係。記憶を持ったまま産まれた事の違和感。……全ての設定が、たまらん。ラスト近く、主人公ジュールとジュリィの会話にただ泣く。うわぁ、綺麗だ。ただ綺麗だ。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉
飛 浩隆 / 早川書房
スコア選択: ★★★★★


象られた力
飛 浩隆 / 早川書房
スコア選択: ★★★★★
by para_noid | 2006-01-09 00:59